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南海トラフ地震の確率80％引き上げ―その意味とは？
南海トラフ地震と聞くと、「いつかは起こるかもしれないけど、正直いつ起こるのかはわからないし……」と、漠然と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
2025年1月、政府の地震調査委員会が「南海トラフ地震が今後30年以内に起こる確率を70〜80％から80％程度に引き上げた」という発表をしたことで、日本列島に住む私たちの不安は、さらにかき立てられているように思います。
でも、この「80％程度」っていったいどういう意味なのでしょう。
実際にどのくらい切迫しているのか、そして私たちはどんな備えをすればいいのでしょうか。
今回は、南海トラフ地震の基礎知識や、他の地域でも懸念されている地震リスク、さらにはその「確率」が示す本当の意味などを、できるだけわかりやすくまとめてみました。
少し長くなりますが、一緒にリスクと向き合いながら、冷静に考えていきましょう。
南海トラフ地震とは？仕組みと基本知識
まず、南海トラフ地震とはどんなものかを簡単におさらいしておきたいと思います。
南海トラフというのは、静岡県の駿河湾から九州東方沖あたりまで、ざっと数百キロにわたって続く深さ4,000メートル規模の海底の溝のことをいいます。
ここでは、フィリピン海プレートがユーラシアプレート（あるいは日本列島側のプレート）の下に沈み込んでいるので、どんどんひずみがたまっていき、あるときそれが一気に解放されて巨大地震が発生するのです。
つまり、エネルギーをパンパンに蓄えたゴムが、バチンとはじけるようなイメージですね。
過去の南海トラフ地震から見える周期性
歴史を振り返ると、南海トラフ地震はおよそ100年から150年の間隔で繰り返し起こってきました。
代表的なのが1707年の宝永地震、1854年の安政東海地震・南海地震、1944年の昭和東南海地震、そして1946年の昭和南海地震などです。
昭和南海地震からは、もうすでに約80年が経過しています。
そう聞くと、そろそろ次が来てもおかしくない時期かもしれない……という気持ちになってきますよね。
実際に地震調査委員会が過去のデータやプレートの動きのモデルを用いて予測をする中で、2013年には「60％から70％」、2014年には「70％程度」、2018年には「70％から80％」と徐々に確率を上げてきて、2025年には「80％程度」に引き上げられたという流れがあります。
「80％」の意味―今すぐ起こるわけではない
でも、ここで重要なのは「80％程度」イコール「今すぐ起きる」というわけではないということです。
この確率は「今後30年以内に地震が起こる可能性」の数値であって、いわば長期的な確率論に基づいたものなんです。
たとえば、「30年以内に80％くらいの確率で雨が降ります」と言われても、それが明日降るかもしれないし、10年後や20年後に降るかもしれない。
もちろん明日降るかもしれないのだから、念のため傘は持っていたい、でも毎日ずっと雨が降るわけじゃない……という、ある種確率論のやっかいなところが、ここでも絡んできます。
地震の場合は、やはり「いつ来るか」はわからないし、来る場合は大被害をもたらす可能性が極めて高いわけですから、私たちにできるのは「備える」ことしかありません。
南海トラフ地震の予想される被害
南海トラフ地震の最大の特徴は、その規模の大きさと被害範囲の広さにあると言われています。
マグニチュード8から9クラスの超巨大地震となる可能性が高いため、もし起こったら静岡県から宮崎県にかけての太平洋沿岸部で、最大震度7クラスの揺れが予想されています。
さらに、津波の規模も甚大なものになると見込まれています。
高知県や和歌山県などでは、30メートルを超える津波が押し寄せるというシミュレーション結果もあるくらいです。
30メートルといったら10階建て以上のビルとほぼ同じ高さですから、とんでもない破壊力ですよね。
また、沿岸部だけではなく内陸部も無傷ではいられないでしょう。
名古屋や大阪といった大都市でも震度6強の大きな揺れが来るかもしれませんし、地盤が弱い地域では液状化現象が起きたり、建物の倒壊や火災被害が拡大してしまうリスクがあります。
さらに、主要な交通網やライフラインがストップしてしまうことで、生活に大きな混乱が生じることが想定されます。
東日本大震災や阪神・淡路大震災の際にも、鉄道や高速道路がしばらく止まってしまったり、電気やガス、水道などが使えずに困ったという経験をした方々がたくさんいましたが、それをはるかに超える規模の混乱が起こる恐れがあるといわれているのが南海トラフ地震なのです。
日本列島全体に広がる地震リスク
実は、南海トラフ地震だけが日本の地震リスクではありません。
日本列島は複数のプレートがぶつかり合う場所にあるので、当然ながら他の海溝沿いでも巨大地震が懸念されています。
たとえば日本海溝や千島海溝沿いで起こる地震、これは過去にも何度か大きな被害をもたらしてきました。
最近では十勝沖地震（マグニチュード8.0〜8.6）の発生確率が「10％程度」から「20％程度」に上がったとか、宮城県沖地震（マグニチュード7.4前後）については「80％から90％」にまで上昇しているという発表もあります。
さらに、千島海溝で想定されるマグニチュード8.8以上の巨大地震に至っては、広範囲に壊滅的な津波被害を与えるリスクがあるとされており、その確率は「7％から40％」という幅で示されています。
地震予測の難しさ―私たちに求められる行動
地震予測そのものは非常に難しく、今の科学技術では「いつ、どこで、どの規模の地震が起きるのか」を事前に正確に知ることはほぼ不可能です。
地震はプレートの動きや地下深くの構造など、複雑な要因が絡み合って引き起こされるため、私たちはどうしても「発生確率」みたいな確率論に頼るしかありません。
確率というのは、あくまでもリスクを定量的に表現しようとする一つの指標であって、その数字が高いからといって「必ずすぐ起こる」というものでもないし、低いから「絶対に起こらない」というわけでもないのが難しいところですね。
では、私たちはこの「確率」をどう受け止めればいいのでしょうか。
確率を見てただ怖がるだけでは、状況は何も変わりません。
大切なのは、「大きな地震に備える意識を常に持つ」という姿勢です。
防災意識を高めるといっても、何も特別なことを始めなければいけないわけではありません。
日常のちょっとした注意や準備が、いざというときに自分や家族、そして地域社会を守る大きな力になります。
具体的には、家の耐震診断を受けてみるとか、家具の固定をきちんとするとか、非常食や飲料水、懐中電灯などを備蓄しておくとか、避難場所や避難経路を確認しておくとか、そういった基本的な対策から始めるだけでも、いざ災害が起こったときのダメージはずいぶん減らせるでしょう。
経済への影響―地震がもたらす大きな試練
さらに、経済面の影響も知っておくといいと思います。
やはり大きな地震が起こるかもしれないとなると、旅行やレジャー、消費などが落ち込むという試算もあったりします。
ある調査では、南海トラフ地震への不安から旅行関連消費が約1,964億円規模で減少するかもしれない、という数字も出ています。
また、地震が実際に発生すれば、もちろんGDPが大幅に落ち込む可能性も高いです。ある研究者の試算によれば、最悪の場合は1,400兆円以上の経済被害が発生する可能性があるというのです。
1,400兆円というと、もう想像がつかないほど巨大な金額ですよね。
でも、あり得るかもしれないという点が、まさに南海トラフ地震の恐ろしいところでもあります。
恐怖に囚われず、冷静な備えを
では結局、私たちはどうしたらいいのでしょうか。
日常を犠牲にしてでも地震ばかりを恐れて暮らすべきなのか、というと、そういう話ではないと思います。
地震は自然現象で、避けることができない可能性をはらんでいますが、恐怖を煽りすぎても何もいいことはありません。
むしろ「備え」をしっかりしておけば、余計なパニックに陥らずに済むはずです。
家族や職場、学校などで防災グッズや避難計画を確認し合うだけでも、「地震が起きても、こう動けばいいんだ」という安心感を得られるでしょう。
冷静に地震リスクと向き合うために
最後に、今回の確率引き上げに対してあまりネガティブになりすぎないようにしたいと思います。
「80％程度」という数字は、過去の地震周期やプレートの動きなど、長期間のデータをもとにしたものです。
確かに高い数値であり、南海トラフ地震が現実味を帯びているということを示してはいますが、「明日かもしれないけど、30年後かもしれない」というのが現実です。
だからこそ、もし明日だったとしても被害を最小限にするために何ができるのかを考えながら、一日一日を普通に過ごすことが大切だと思います。
日本に住む私たちは、常に地震と共存していかなければいけない運命にありますが、その中でどう安全・安心を確保するかを考え続けることが、防災の基本姿勢でしょう。
地震リスクに冷静に備え、安心な未来を
というわけで、南海トラフ地震をはじめ、日本全体での地震リスクが高い現実をもう一度認識しつつも、むやみに恐怖に支配されるのではなく、いざというとき慌てず冷静に行動できる準備をしておくのが大切だと思います。
災害は避けられなくても、被害は少しでも軽減できる可能性があるからです。
せっかく「80％程度」という確率が発表されたのなら、今こそ家族や友人、あるいは地域コミュニティと、地震対策について話し合ってみませんか。
大切な命を守るために、そして未来の日本を守るために、私たち一人ひとりができることを見つけて行動していくことが、何よりも大事なのではないかと思います。
そうすれば、いつ起こるかわからない南海トラフ地震に対しても、少しずつ冷静に構えていけるでしょう。
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